日本抗加齢医学会総会

2021年6月25日(金)~2021年6月27日(日)

馬ガラクトシルセラミドによる角層セラミド合成促進効果

◯五十嵐 多美1・柳 大樹1・八木 政幸1・芋川 玄爾2・市橋 正光3(ロゼット株式会社1・宇都宮大学2・アーツ銀座クリニック3)

【目的】
セラミドは皮膚角層における水分保持機能やバリア機能に重要な役割を持つことが知られ、角層セラミドが減少すると、乾燥やバリア機能低下を生じ、アトピー性皮膚炎や老人性乾皮症の発症要因となることが多数報告されている。ガラクトシルセラミドを主成分とする馬由来セラミド(HC)は、アトピー性皮膚炎患者を対象とした使用試験により、肌状態や保湿力を改善する効果が報告されているが、そのメカニズムは不明である。本研究では、HCが角層水分保持やバリア機能に与える効果とそのメカニズムを明らかにすることを目的として、培養ヒト3次元表皮モデル(RHEEs)用いて、HCの角層セラミド合成促進作用を調べた。

【方法】
HCを添加し10日間培養したRHEEsの角層を回収して脂質を抽出し、薄層クロマトグラフィーを用いてセラミド含量を測定し、角層蛋白当たりの量を比較した。セラミド代謝酵素の遺伝子発現量は、HCを添加して48時間後にRNAを抽出し、リアルタイムPCRにより解析した。遺伝子発現量の変動が確認されたceram ide synthase (CerS)3、elongases of very long-chain fattyacids (ELOVL)4、glucosylceram ide synthase (GCS)、β-glucocerebrosidase (GBA)、sphingom yelin synthase (SMS)1は4日間培養後の表皮を用いてウエスタンブロッティングを行い、タンパク発現量を比較した。

【結果】
RHEEsへのHC(1又は2%)の添加によって、角層の総セラミド量、Cer[EOH]、Cer[AS]、Cer[NH]、Cer[AP]が有意に増加した。セラミド代謝酵素の遺伝子発現解析ではCerS3、ELOVL4、GCS、GBA、SMS1及びacid sphingom yelinase (ASM)のm RNA発現が有意に増加した。またウエスタンブロッティングの結果、CerS3、ELOVL4、GCS、GBA、SMS1のタンパク発現の増加が認められた。

【結論】
HCはグルコシルセラミド経路とスフィンゴミエリン経路、両方の経路に関わる酵素と、アシルセラミドの合成に関わる酵素の発現促進を介して、角層セラミド量を増やすことが明らかになり、皮膚塗付により、水分保持やバリア機能を改善する物質となる可能性が示唆された。