第22回
日本抗加齢医学会総会
2022年6月17日(金)~2022年6月19日(日)
馬ガラクトシルセラミドの角層セラミド合成促進効果とそのメカニズム
○五十嵐多美1・柳大樹1・八木政幸1・芋川玄爾2・市橋正光3(ロゼット株式会社1・宇都宮大学2・アーツ銀座クリニック3)
【目的】
ガラクトシルセラミドが主成分の馬セラミド(HC)はアトピー性皮膚炎患者への塗付により皮膚症状を改善し、そのメカニズムとしてHCのセラミド代謝酵素の発現促進を介した角層セラミド量の増加を報告した。本研究ではHCのセラミド合成促進効果のメカニズム解明のためヒト正常表皮角化細胞(NHKs)を用いて、異なる分化状態によるHCのセラミド代謝酵素への作用の違いと、上流シグナルであるペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)の関与を調べた。
【方法】
NHKsを増殖条件とCa2+誘導性分化条件で培養しHC添加後6、12、24、48時間でリアルタイムPCRによりセラミド代謝関連酵素、角化関連因子とPPARs発現を解析した。さらにHC添加48時間で有意な遺伝子発現量の増加を示したセラミド合成酵素(CerS)3、脂肪酸伸長酵素(ELOVL)4、グルコシルセラミド合成酵素(GCS)へのPPARsアゴニストとアンタゴニストの影響を調べた。
【結果】
NHKsへのHC(200μg/ml)添加は増殖条件でスフィンゴミエリン合成酵素(SMS)2、β-グルコセレブロシダーゼ(GBA)、インボルクリン(INV)、トランスグルタミナーゼ(TGM)1、PPARαとPPARβ/δが、分化条件ではCerS3、Elovl4、酸性セラミダーゼ(ASM)、SMS2、GCS、GBA、INV、TGM1とPPARβ/δのmRNA発現が有意に増加した。またPPARβ/δのアンタゴニストGSK0660またはPPARγのアンタゴニストGW9662(各20μM)によって、それぞれCerS3/Elovl4/GCS、Elovl4/GCSに対するHCの発現促進効果が抑制された。一方PPARαのアンタゴニストGW6471(4μM)にはその抑制効果は認められなかった。
【結論】
HCのセラミド代謝酵素の発現促進効果は主にPPARαとPPARβ/δの発現促進と、PPARβ/δの活性化を介した効果であることが判明した。