専門医監修の製品開発

アトピー性皮膚炎の研究

薬用AKシリーズは、神戸大学医学部名誉教授 市橋正光先生により臨床テストを行いました。
ここに市橋先生が発表された内容を一部を抜粋して紹介します。

「アトピー性皮膚炎に対するセラミド含有外用剤の効果について」
~第21回日本小児皮膚科学会(平成9年5月31日/於 笹川記念会館)発表内容より抜粋~

神戸大学医学部皮膚科
市橋正光、堀川達弥、高島努

■まとめ
アトピー性皮膚炎の特に皮膚乾燥部に対しグリコセラミド含有外用剤(AKクリーム、AKローション)を4週間連日外用しその臨床効果を検討した。やや有効以上を含め有用性は65%であった。不変20%、増悪は15%であった。しかし軽度の刺激感以外には副作用は認めなかった。

■はじめに
アトピー性皮膚炎発症の原因の全容はいまだ不明であるが、多くは遺伝性または環境因子が発症に影響するアレルギー性疾患である。一方アトピー性皮膚炎患者の皮膚は外的刺激に対する防御能が低下していることも見出されている。つまり、皮膚バリアー機能異常を一つの特色としている。近年、アトピー性皮膚炎では角層の保湿能が低下しており、特にセラミドやnatural moisturizing factorの減少がその原因となっていることが明らかにされてきた。アトピー性皮膚炎では皮膚の乾燥を伴うものが多く、また乾燥皮膚は掻痒を強め、掻破による増悪と密接に関連していると考えられる。それゆえアトピー性皮膚炎ではセラミドの外用は有益であると思われる。我々はアトピー性皮膚炎患者の特に乾燥性皮膚に対してグリコセラミド含有配合剤(クリーム、ローション)外用を行い良好な結果を得たのでここに報告する。

■目的と方法
目的: グリコセラミド配合クリーム、ローションのアトピー性皮膚炎(特に乾燥性皮膚)に対する効果を検討する。

方法: 平成8年6月1日より平成9年4月31日までに神戸大学医学部付属病院皮膚科を受診したアトピー性皮膚炎患者(軽症4例、中等症12例、重症4例)20名に対しロゼット社グリコセラミド配合クリーム(AKクリーム;0.5%セラミド配合)、ローション(AKローション;0.85%セラミド配合)を1日2-3回外用した。他の治療は不変とした。ステロイド外用例は1例のみでこの症例は開始前1カ月以上症状には変化がなかった。なお患者の同意は口頭にて得た。

■評価
外用4週後におこなった。掻痒、紅斑、鱗屑について0:無し、1: 軽度、2: 中等度、3: 高度の4段階で評価。全般改善度については1: 著明改善、2: 改善、3: やや改善、4: 不変、5: 悪化の5段階で評価した。
また試験終了時に外用剤の使用感についてアンケート調査をおこなった。アンケートは全体的な使用感、肌へのなじみ、について 1)良い、2)普通、3)悪いの3段階で行い、べたつき感、しっとり感、さっぱり感については 1)あり、2)普通、3)ないの3段階で行った。

■結果
図1に全般改善度を示す。10%に著明改善、20%に改善、35%にやや改善を認め、やや改善以上では65%を占めた。20%は不変、15%に増悪を認めた。掻痒、紅斑、鱗屑のスコアの変化では図2に示す如く掻痒、紅斑で外用後に有意な改善を認めた。鱗屑ではスコアの改善がみられたが有意ではなかった。アンケート調査のまとめを図3~6に示す。全体的な使用感はクリーム、ローションともに良いが多く、普通を大きく上回り、また悪いと回答したものは0であった。肌へのなじみは良いと答えたものはクリームの方がローションよりも多く、悪いと答えたものはいなかった。べたつき感はクリーム、ローションともないと答えたものが多く、ありと答えたものはクリーム、ローションともにみられた。しっとり感およびさっぱり感は良いまたは普通と答えたものはクリームの方がローションよりも多く、ローションではないと答えたものが見られた。

■考察
アトピー性皮膚炎の治療は通常2方向から行われる。1つは主にステロイドホルモン外用による炎症症状のコントロールである。他はスキンケアーと呼ばれ、皮膚を清潔に保ち、また乾燥からまもり皮膚のバリアー機能をできる限り健常状態に維持することである。アトピー性皮膚炎の皮膚は一般に乾燥している。その原因として表皮角層の水分量の低下が指摘されている。つまり、角層細胞間に見られる脂質、特にスフィンゴ脂質のセラミドの含量が少ないためと考えられている。その原因としてはセラミド分解酵素ceramidaseの増加によるものではなくセラミドを作るsphinomyslinase(SMase)の減少やsphingomyelin(SM)acylaseの増加によりセラミドではないsphingosylphosphorylcholineの産生系にsphingomyelinが代謝されるためではないかとされている。このようにセラミドの減少がアトピー性皮膚炎の乾燥皮膚の一因となっており、セラミド含有外用剤をアトピー性皮膚炎の乾燥性皮膚に外用することは合目的である。またアトピー性皮膚炎では経皮水分喪失量(TEWL)が増加している。その原因の一つはアトピー性皮膚炎では角層のnatural moisturizing factorが減少しているためである。今回我々が用いたものはグリコセラミドであり水分保持能はあるが角層に通常存在するものではない。しかし表皮内でセラミドに変換されると考えられる。今回セラミド含有外用剤がアトピー性皮膚炎に対して紅斑の軽減や鱗屑の減少、さらには掻痒を抑えるなどの臨床効果がみられたことから、減少したセラミドを補充することはアトピー性皮膚炎の皮膚症状をコントロールするためには有用であろうと思われた。

参考文献

  1. Imokawa G et al:Decreased level of ceramides in stratum corneum of atopic dermatitis:an etiologic factor in atopic dry skin? J.Invest.Dermatol. 96:523, 1991
  2. Yamamoto A et al:Stratum corneum lipid abnormalities in atopic dermatitis. Arch Dermatol Res,283:219,1991
  3. Jin K et al:Analysis of bglucocerebrosidase and ceramidase activities in atopic and aged dry skin. Acta Derm Venereol,74:337,1994
  4. Murata Y et al:Abnormal expression of sphingomyelin acylase in atopic dermatitis:An etiologic factor? J.Invest.Dermatol., 106:1242-1249,1996