アトピー性皮膚炎とスキンケア

アトピー性皮膚炎とはどんな病気か?

アトピー性皮膚炎はいくつかの要因が重なって発症する皮膚の炎症性疾患である。その主要因として、遺伝的背景、免疫学的異常、表皮バリア機能異常と環境因子を挙げることができる。アトピー性皮膚炎は、家族や本人に、喘息やアレルギー性鼻炎を合併する傾向があり、瘙痒を伴う湿疹病変で、多くは小児期に発症し、寛解と増悪を繰り返し、年代に応じた特色のある皮膚症状を呈する1,2,3)

乳児期(2歳以下)、小児期・学童期(2−12歳)と思春期・成人期(13歳以上)の3期はそれぞれ特色ある皮膚症状を呈する。乳児期では主に、顔面頬部と額部、頭部に紅斑と丘疹がみられ、搔破により湿潤し、しばしば血痂をつけた局面となる。学童期では、皮脂の分泌が少ないため皮膚は乾燥しやすく、四肢の関節部屈側に紅斑が出やすい。また、同部位に炎症を繰り返すため、表皮が肥厚し苔癬化局面となり、搔破痕もみられる。さらに四肢には、繰り返す瘙痒により結節ができる。成人期では、顔面と頚部およびその周辺と四肢にも拡大し、苔癬化局面が多くなる。さらに長年の炎症を繰り返したために、色素沈着、さらには、頭部や眉の脱毛が生じる。眉毛の外1/3の脱毛状態は、Hertogheサイン4)と呼ばれている。

なお、小児期から20歳ころまでは10-15%の罹患率と云われている。40歳を過ぎると、症状が軽くなる傾向がある。
アトピー性皮膚炎の特色である痒みは、特に、入浴や運動など、皮膚温が上がると強くなる。さらに発汗時にも痒みが増す。夜間の睡眠時には体が温まるためかゆみが強くなり、睡眠障害を訴える患者も多く、昼間の痒みは集中力の低下につながり、社会生活上マイナスとなるため、生活の質(QOL)を下げる5)
アトピー性皮膚炎の程度を表す客観的指標として、簡便なものでは、日本アレルギー学会が提唱する重症度分類がある。軽度の皮疹だけが見られるときは軽症、強い炎症を伴う皮疹が全身皮膚の10%未満であれば中等度、10%以上で30%未満を中重症、30%以上を最重症としている6)。なお、治療効果の判定などには、世界的に、皮疹の面積と強さを数値化した、SCORAD(Severity Scoring of Atopic Dermatitis)やEASI(Eczema Area and Severity Index)が使われている7、8)。診断で重症度の指標となる検査として、血清IgEの値や、TARC(thymus and activation-regulated chemokine)値の動きが短期的な症状を反映する指標として注目されている9)
アトピー性皮膚炎の重症例では、白内障や網膜剥離などの眼疾患を伴うことがある。

神戸大学名誉教授市橋正光先生

神戸大学大学院医学研究科博士課程修了。専門は皮膚科学、とくに紫外線の皮膚への影響について長年にわたり研究。海外でも皮膚科医育成、治療に携わる。